陽子
妹の陽子は、バイクで大学に通ってる。
ディ○ニーランドの近くの大学で、日本語の
ナントカを勉強してるらしい。
大学は、夜間だ。
高校も、定時制だった。
定時制に入ったのは、陽子がいわゆる「不登校」で
小学校4年生から8年間学校に行けなかったから。
2年遅れながらも、独学で入学した。
定時制は不良だらけで、陽子もタバコを覚えた。
心の持病が悪化して、入院したこともあった。
故に、大学は陽子にとって、パラダイスらしい。
しかし、病気が治ったわけではなく、通院しながら
の大学生活だ。バイクで通学してるのも、病気のために
電車に乗れないからだ。
夕方、大学に向かう陽子は、ときどきとても辛そうに
している。
兄として、とても可哀想に思う。それでも、私には
どうしてやることも出来ない。
同級生より4年遅れで大学に入った陽子。
それなりに負い目のようなものを感じているらしい。
そんなもの、感じる必要なんてないのに。
陽子は陽子なりに、一生懸命生きてる。それは
私も、両親も認めている。
学業の成績は、なかなか良いようだ。
大学ではそれなりに友だちも出来て、楽しくやって
いるようだ。彼氏はいないみたいだけど。
大学から帰って来る陽子の顔は、輝いている。
こう言ってはなんだが、定時制時代の陽子は酷かった。
「学校でなにかあったな」ということがハッキリわかる
顔をして帰ってきた。家族に当たることもしばしば。
そんな陽子が、顔色良く帰って来るようになったのだから
両親も大喜びだ。
陽子も少しは成長したらしい。
陽子にとって、兄である私は心の拠り所であるらしい。
歳はずいぶん離れているが、陽子が中学を出る頃から
よく一緒にゲームしたり、バカ話をして笑い合った
ものだ。
決して、出来の良い兄ではないのだが。
そんな愚兄が陽子にしてやれるアドバイス。
「苦しい事にぶつかって、それを乗り越えたところに
お前の道が拓けるだろう」
「苦しむ事を恐れてはならない。それが自分の性格だと
思って、素直に受け入れること」
「人生、諦めてはいけないよ」
こんなところか。
この先、陽子に地獄が待っていることは目に見えている。
そのとき、これらの言葉を思い出してほしいと、切に願う。
負けるな、陽子。その笑顔を忘れずに。
この愚兄は、いつもお前を見守っているよ。
(ある人生の記録より。部分的にフィクション。)
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